『恋愛の起源ーー明治の愛を読み解く』(佐伯順子)

恋愛の起源―明治の愛を読み解く

恋愛の起源―明治の愛を読み解く

失楽園』(渡辺淳一)と並行して日経新聞に連載していたんだって。
明治時代、士農工商から四民平等になって、さらにキリスト教を通じて「男女平等」という発想が流入して、男女はだれとでも「恋愛」できる、という概念が日本に生まれて以降の、い〜ろいろを、明治時代の文学から読み解いたエッセイ。
制度的に「平等」になったところで、結局、人間って、一朝一夕に差別意識は乗り越えられないんだなあ、ということがよく分かった。
さらに、この「差別意識」に自覚的か無自覚かで、後世に読み継がれる名作か、単なる流行小説かが分かれているようにも思えた。
佐伯さんは、キリスト教の「愛」ってのは、異性愛にかぎらず、相手への思いやりやまごころを指しているのに、結局日本人は明治時代に「異性愛」に限定して誤解したっきり「愛」っていう言葉を使っているから、未だに「愛」という日本語は、なんとなく、うさんくさく感じるんじゃないか、と言う。
じゃあ、キリスト教の「愛」をさす言葉って、まだ、適切な訳語がないってことなのかなあ、と思ったりして。