『とはずがたり(上)全訳注』二条(訳注:次田香澄)

とはずがたり(上) (講談社学術文庫)

とはずがたり(上) (講談社学術文庫)

渡辺泰明先生の『うた恋』に「とはずがたり」の一部を漫画化したものが載っていて、あー、こんな話だったっけなあ、とあらためて本書を手に取る。
現在上巻(巻1・2)まで読んだけれど……いやー、この時代に生まれなくてよかったわ。
中古の貴族の男性(天皇含む)にとって、多くの女性に多くの子どもを生ませ、子どもを政治的に優位な地位につかせ、その親族を養い、つまりその家族経営には、現代でいえば中小企業の社長さんのような責任があった、とは、『平安文学でわかる恋の法則』(高木和子)で学んだところ。でも、鎌倉時代に入って、政治権力が武士に移ったあとは、もー、貴族(天皇含む)にとって、女(と女の体)はただのおもちゃにすぎないのではないかと思えてくる。

二条が暁の雪の子どもを産むシーンは、断片では知っていたけれど、通して読むとつくづく哀れだった。

ついでに、『うた恋』のマンガは、本文と微妙に違った。後深草院の「おもちゃ」として、性助法親王に与えられた、と二条が泣くシーンがあるが、自分は後深草院のなぐさみものにすぎない、という認識はそのずーっと前から持っている。性助法親王にはむしろ、二条も積極的にセックスをして、刹那的な情事だと思っていたのに、やたら執着されてしまって困ったなあ、といっている。むしろ、後深草院によって近衛大殿という家臣と無理矢理セックスさせられるシーンに、それはあんまりすぎやしないか、と二条が嘆く場面があって、その場面とくっつけたマンガ構成だったのかもしれない。まあ、ちょっと陰惨すぎて、高校生むけのマンガにはあまりストレートに描けなかったんだろうね。