『短歌で読む 昭和感情史 日本人は戦争をどう生きたのか』菅野匡夫・『歌集 小さな抵抗 殺戮を拒んだ日本兵』渡辺良三

短歌で読む 昭和感情史 (平凡社新書)

短歌で読む 昭和感情史 (平凡社新書)

歌集 小さな抵抗――殺戮を拒んだ日本兵 (岩波現代文庫)

歌集 小さな抵抗――殺戮を拒んだ日本兵 (岩波現代文庫)

大学生のころ、短歌を詠んでいた。そのころ、日本には「結社」というものがあって、それはそれはたくさんの市井の人々が、31文字にのせて生活を書き留めているということを知った。今でも、新聞の投稿欄には、毎週たくさんの歌が載る。今読んでもなにもめずらしくない平凡な歌ばかりでも、50年もすれば貴重な歴史の記録となるのだろう。

渡辺良三氏の『歌集 小さな抵抗』は、思うことが多々。もうひとつのブログ、『眠られぬ夜のために』に、そのうち、きちんと書こうと思っている。

『短歌で読む昭和感情史』に載っている短歌も面白いのがいくつか。

さがし物ありと誘(いざな)ひ夜の蔵に明日征(い)く夫(つま)は吾(われ)を抱きしむ 成島やす子
戦死せし兄が形見の戦闘帽 この頃父のかぶり歩くも 平井次郎
妻よ見よ蒔(ま)きたる小豆(あずき)日を吸ひて芽立(だ)ちきそへり死なずともよし 内藤濯
頭髪のやけうせしむくろがみどりごをいだきてころぶ日の照る道に 天久卓夫
大き骨は先生なりあまたの小さき骨側(そば)にそろひてあつまりてある 正田篠枝(原爆歌集『さんげ』より)

著者は、戦前・戦中の人々の生活はもはや、現代人にとって「異文化」であるのかもしれない、と書いてある。たしかに、家父長制にせよ、国家主義にせよ、言葉で説明されるのと、現実にそのような文化の中で生活していた人たちの実感とは、違うところがあるかもしれない。
でも、想像がまったく及ばない、ということもあるまい。社会や文化は変化しても、人間の感情はそう変わらない。