『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎(上)(下)』ジャレド・ダイアモンド 倉骨彰訳

銃・病原菌・鉄 上下巻セット

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読もう読もうと思っていたら、文庫化していた。こりゃいい機会だ、ということでさっそく。
著者が調査のために滞在したニューギニアで、ニューギニア人の友人ヤリから、「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」と問われたことから始まる一大考察。
結論からざっくりまとめると、つまりそれは、「環境」のため、ということになる。
栽培に適した植物が自生していた地域、家畜化しやすい動物がいた地域から文明は発達する。➡農業と畜産によって食糧の安定供給が保たれ、食物生産に従事しなくてよい層の人々が生まれる。➡そうした階層の人々が、文字を利用して複雑な支配組織を作ったり、職業軍人になったり、工業製品を開発したりする。➡家畜のおかげで病原菌への耐性がつく。➡職業軍人、文字、病原菌への耐性によって優位に立つ地域の人々が、環境的に農業や畜産が未発達の地域を攻撃し、支配下に置く。
とまあ、そういうわけで、現在の世界の地域格差が生まれた、というのが、ダイアモンド氏の仮説。真偽のほどはともかくとして、なるほど面白いです。
ほかにも、興味深い指摘が次々。文明は東西には伝播しやすいが、南北にはしにくい。文字の発明は非常な困難を伴うので、世界でも数カ所でしか発明されなかった。海岸線が複雑な地域は統一しにくいのでヨーロッパは国境が細かくわかれ、中国は一つだった。ひろい面積をもつ国は、広い範囲から発明発見を集めやすい一方で、中央が進歩・開発の中止を決めると、広い範囲で進歩が一時停止してしまう。などなど。
なんとなく、後付けのような気もしないでもないところもあるが。
最終章の「アフリカはいかにして黒人の世界になったか」はよくわからなかった。ただ、こういう問題設定は面白いよなあ、と思った。