『百鬼夜行の見える都市』田中貴子

百鬼夜行の見える都市 (ちくま学芸文庫)

百鬼夜行の見える都市 (ちくま学芸文庫)

京都の町は不思議だ。毎年、ほんの一週間ほど仕事で滞在するのだけれど、田舎なんだか都会なんだかよくわからない。よくできた巨大な映画か観光用のセットのような町並みはちょっと現実感がないんだけれど、軒先のにおいには濃厚に生活感がただよう。百鬼夜行が通っていた町の雰囲気だ。くらべて江戸は、せいぜい狸がばけた一つ目小僧くらいで、やっぱり「都市」としてはちょっと新しいんだろう。百鬼夜行が通る、というのは、それだけ大掛かりな町並みと、闇と、それが存在できる時代設定が必要で、つまり、百鬼夜行とは、京都以外に現れにくい存在だという気がする。
田中氏の、百鬼夜行とは「都市」に出現するものであって、鬼やつくも神とは別物、という論考に、nikkouは思う。中古・中世の「都市」とは、すなわち、京都じゃないか。近世以降発達した日本のすべての都市に、百鬼夜行は現れない。
すごいな、京都。