『困ってるひと』大野更紗

困ってるひと

困ってるひと

新聞や雑誌でやんやの大喝采なので、どんなもんかしら、と読んでみました。笑って泣ける闘病記…とのふれこみでしたが、nikkouから見ると、いたってまっとうでした。文体が軽いので、「笑って泣ける」みたいなレッテルを貼られてしまうんでしょうけれど、からりとしていて、そんなウェット感ないですよ。
本書が面白いのは、一番最後の、病院脱出の部分だと思う。病院に囲い込まれて、ワーカホリックなドクターたちに手厚く保護される狭い世界で一生を終えるわけにはいかない、と、難病を背負いつつ、病院を出る、という、まさに「ここからスタート!」というところで本が終わる、というのが、闘病記と一線を画するのね。闘病記というより、冒険記なんだな。そういえば、病気発症自体が、なんだか冒険のようだ。
ひとつ、おおっと思ったのが、挿画が能町みね子だったことだ。好きなんですよね、能町さん。大野更紗さんのからりとしたテイストとよく合っておりました。