『自殺されちゃった僕』吉永嘉明

自殺されちゃった僕 (幻冬舎アウトロー文庫)

自殺されちゃった僕 (幻冬舎アウトロー文庫)

妻、友人がふたり、立て続けに自殺した、というバブル世代サブカル・ライターの体験記。
たぶん、自分が「失われた10年」世代だからだろう、バブル世代の狂乱には、なーんとなくいやーな気持ちになる。昔のコマーシャルやポップソングなんかを見たり聞いたりしても思うんだけど、バブル時代を生きた人の言葉って、どうして時々、こんなにうわっ滑りに感じるんだろう。むやみやたらと「−」(ダーシ)をつかったり、余韻を含ませたモノいいをしたりと、本書にも変な甘さが目につく。モノを書く人は、もう少し引いて状態を見なきゃいけないんじゃないかなあ。

本書のあとがきに、単行本版が出たあと、亡くなった妻に共感を寄せる手紙が多く寄せられた、と書いてあって、ああそうだろうなあ、と思った。nikkou自身は、自殺したいとまでは思わなかったけど、なんとなくこの著者に、反感を抱くような、そんな気持ちになってしまったのだ。
本書で最も面白かったのは、「ねこぢる」の夫、山野一さんのひたすら静かな様子。そして、家庭って案外、子供に影響を与えないんじゃないかということだ。いっとき、「アダルト・チルドレン」なんて言葉がはやったけれど、著者にせよ、著者の妻にせよ、家族がどうであれ、こういう道を進んだんじゃないかなあという気がする。
なによりよかったのが春日武彦さんの解説で、本書でできなかった「死ぬな」というメッセージを、ほんの7ページでばしっと発している。のみならず、nikkouが感じていた「この著者、書き手としてどうなんだろう」ということも、遠慮なく言っちゃって、ちょっとすっきりした。