「続 明暗」水村美苗

続 明暗

続 明暗

まずこのめんどくさい人間関係を、よくまとめたなあ、と思う。漱石の描いた登場人物の特徴をそのままに、落ち着くところに落ち着いている。さらに、「清子」という謎の人物を、よくぞ描いたなあと思う。見事であります。
ただ、まったくもって当然のことなのだけど、漱石ではないな、と思った。
「明暗」をネタに書いた、水村美苗の小説だ。『本格小説』や『私小説』までも思い出させる。この起伏に富んだストーリー、現代人にも腑に落ちる人間の心理、人間の力強さ、そして現代から見た明治の位置づけ。
もし漱石が完成させるとしたら、きっともっとくどくどしく登場人物の心理状態を説明し、これといったドラマもないままに、最後だけぐわーっと煮詰まって完になった気がする。きっとそこには明治の人間の、将来の日本がどうなっていくか分からない漠然とした不安感も漂っていただろう。
「現代小説」とはなにか、ということを、なんだか考えさせられてしまう「続編」でありました。