「古事記の世界」西郷信綱

古事記の世界 (岩波新書 青版 E-23) (岩波新書 青版 654)

古事記の世界 (岩波新書 青版 E-23) (岩波新書 青版 654)

一週間かけてちまちま読む。けっして難しい本ではないのだけれど、さっさか読み飛ばせるものでもなくて。
一行ごとに、「へー」「ほー」「えー?」と感嘆したり疑問を感じたりしながら、本当に「読む」ことそれ自体を楽しんだ一冊。

「葦原中つ国」の「葦原」は、天上世界から見て、「葦原の茂みが風にざわざわと乱れる」「無気味なデモーニッシュな世界」という意味だそうだ。
ちなみに
高天原」=「上」=伊勢
「葦原中つ国」=「中」=大和
「黄泉の国」=「下」=出雲
だそうです。

また、古事記全体が、大嘗祭を表していて、大嘗祭自体、古代人が見た世界の生まれる過程を表しているんだとか。
また、日本書紀は「日本」という語が入っていることからも、極めて政治的な書、それに対して「古事記」は、神話的な観念に基づいている。神話の文法で語られた「この世界のなりたち」「この世界のとき」を語ったものが「古事記」というわけ。

今の天皇が即位するときの大嘗祭は一部、非公開だった。その非公開部分が、西郷先生の推測になるんだけれど(天皇が胎児になって再生する儀式だそうだ)、公開されれば、古事記の研究にも寄与したろうに。

しかし、死からのよみがえり、再生、というのは、どこの民族にもある発想なんだなあ、と感心する。