『現代女性秀歌』栗木京子

現代女性秀歌

現代女性秀歌

栗木今日子『女性現代秀歌』を読み終えた。現代の女性歌人の歌をピックアップして解説した本。
面白いことに、恋愛歌や、家族詠なんかには、あまりぴんとこなかった。
学生時代に歌を詠んでいたころは好きだった河野裕子やら俵万智やらは、なんとなく、もういいや、という気がした。
それよりも、
ハンセン氏病と闘いながら詠まれた
「次の世にいのちゆたけきをみなにていく人もいく人も吾は生みたし」(津田治子)
(来世では命の豊かな女性になって何人も何人も私は生みたい)
とか、
老母の介護のなかに詠まれた
「今朝われは寝不足ゆえに老母を大き声もて一喝したり」(今井恵子)
とか、
広島の原爆のさなかに詠まれた
「炎なかくぐりぬけきて川に浮く死骸に乗っかり夜の明けを待つ」(正田篠枝)とか、
こないだの津波を詠んだ
「従叔父(おじ)はこなた従叔母(おば)はかなたの湾の底 引き上げられて巡り逢いたり」(梶原さい子)
みたいな歌に目を奪われる。

昔は、時事詠なんて、新聞の見出しみたいだとかいって馬鹿にしていたのに、今よむと、days japanのスナップ写真より鮮やかで衝撃的だ。