『イラクサ』アリス・マンロー 小竹由美子訳

イラクサ (新潮クレスト・ブックス)

イラクサ (新潮クレスト・ブックス)

長いこと本棚に置いてあった一冊。いずれ英語の原著で読もうと思っていて、それまでは訳書は手に取らないつもりだった。
今年の1月1日、無理なものはさっさとあきらめ、手放せないことに時間と労力を集中させよう、と決意した。今、自分が時間と労力を掛けなければならないのは、日本古典文学の読解力を上げることで、英語で小説を読む訓練のほうにそのエネルギーをふりわける余裕はない。
というわけで、ようやく本書の訳書を手に取った。
読了してつくづく思うに、これを原著で読めるようになるには、数年の訓練を要しただろうなあ。なかなか高度に文学的でした。
9作の短編集だが、登場人物の関係や、彼らが置かれた状況を把握するのに、いずれもしばらく読み進めなければならない。把握するのがやっと、という作品もあって、読み終えて、ああしまった、行間や重要なフレーズや伏線を読み落としたなあ、と感じるものも多い。「恋占い」や「熊が山を越えてきた」のように、人物関係や状況をわりとすんなり把握できる作品でも、重要なところを読み落とした、という感覚は強い。
たぶん、もう一回、最初から読まなきゃならないだろう。
でも、一ヶ月くらいは寝かせておこうと思う。
なかなか、そういう小説は多くはない。さすが「現代のチェーホフ」と呼ばれるだけのことはある。