『ルポ 妻が心を病みました』石川結貴

(030)ルポ 妻が心を病みました (ポプラ新書)

(030)ルポ 妻が心を病みました (ポプラ新書)

タイトルから、著者石川さんの体験談かと思ったが、さにあらず。「妻が心を病んだ」という状況にある夫たちについてのルポルタージュでした。(私だったら、タイトルは「ルポ 妻が心を病むとき」とかにするなあ。)
「妻」たちのおかれた立場はさまざまながら(専業主婦、ワーキングマザー、パートタイマー子どもなし、などなど)、なにか同じ女性として、とても連帯感を感じさせるというか、人ごとじゃない気がした。
石川さんも指摘しているとおり、女性にはライフイベントが多い。結婚、出産、育児、親の介護、夫の転勤などなど。生理現象も男よりダイナミックだ。出産はもちろん、月ごとの月経も、更年期も、ホルモンバランスを崩しやすい。さらに、シャドーワークの報われなさ、という女性独特のストレスもある。ワーキングマザーの実感として、仕事だけしている、というのは、すごく楽だ。育児と家事の分担が本当に夫婦で50・50になれば、どんなに妻たちの負担は軽いだろう。しかしそうならないのは、単に男性の意識の問題ではないのだろう、とあるアパレルメーカー(たぶんユニ●ロ)の過酷な労働状況で働いていた夫のルポを読んで思った。社会全体が、夫たちに、家族を犠牲にすることを強いているのではないか。そうしなければ、社会が回らないと思い込んでいるのではないか。
心を病んで追いつめられていく妻との生活のなかで、価値観や妻との関係性を見直していく例には救われる一方で、妙なプライドによるものか家族を道連れに引きこもっていく例には暗澹とした。
自分自身、いつ、このような淵にたたされるか分からない。精神病の予防として、本書では「コミュニケーション」「認知」「行動」の三つを挙げている。具体的にどうすればいいのかは、あまりよく分からない。たぶん、それだけで一冊の本が書けるのだろうけれど。
個人的な経験を書き留めておくと、先日、3日ほど、まったく体が動かなくなった。這うように病院に行くと、内科の先生に「お疲れなんでしょう」と言われた。あぶねーあぶねー。この状況が続くと鬱ってやつになるんだろう。折しも夫が当直だったので、保育園にぎりぎりに這うようにして迎えにいき、家につくなりベビーフードを食べさせ、子どもだけ風呂にいれ、そのまま一緒に布団に潜り込んで、翌朝ぎりぎりまで寝ていた。つらかった。そして、思った。がんばるの、やめよう。こどもが生まれても、できる限り仕事をしようと思っていたけれど、今はそういう時期じゃない。いずれ、また仕事ができる時期がくる。今は、必要最低限の仕事をしながら、子どもとの時間を味わおう。そう決めた。