『蛙鳴』莫言

蛙鳴(あめい)

蛙鳴(あめい)

集団的自衛権論争で、仮想敵国として名指しされている中国とは、さていかなる国か、ということで、ノーベル平和賞受賞作家の莫言を読む。
一人っ子政策のもとでの、強制的な堕胎や避妊手術やらを描いた作品で、陰惨を通り越して、滑稽ですらある。自分の倫理観がメルトダウンする。(そして、こういう感覚が、中国小説の醍醐味だったりもする。「千年の祈り」(イー・ユンリー)とか「睡蓮の教室」(ルル・ワン)とか。)
ラストの後味の悪さったら。これは、中国の読者にとって、ハッピーエンドなのか、否か。nikkouにとっては、あんまりにあんまりだろーっ、という感じ。闇代理母が処女で、借金を返したら自殺しようと思っていた、という台詞は陰惨すぎてもう。

莫言ノーベル賞をとったとき、中国共産党がやんや、やんやの祝福モードだったのをとらえて、莫言はご用作家だという声が上がったが、
莫言は、私の作品を読めば、ご用作家かどうか、分かる、と言った。
まつも、そう思う。
以前読んだ「豊乳肥臀」もそうだったけれで、莫言を読むと、「あー、中国に生まれなくってよかった」と思う。
それがノーベル賞って、中国の人にとってみれば不名誉なんじゃないか。
中国ではだれも読んでいないのか、それとも、こんなこと不名誉でもなんでもないのか。