「集団的自衛権の行使』 里永 尚太郎

集団的自衛権の行使

集団的自衛権の行使

ああ、そうか、と目から鱗集団的自衛権推進派が恐れている国は、中国であるらしい。

「(中国は)政権の交代、国内の腐敗、経済格差、人種・民族、等々の問題で様々な矛盾があり、それに対する人民の不満は爆発寸前にあると考えられる。そのはけ口を対外的な問題を設定することによってしのいでいる面もあります」(山崎拓
「(中国の国民の)不満がやがて体制側へ向かうのを恐れて、回避するためのガス抜きとして、そのエネルギーが『日本けしからん』という形になっているのではないかと思います。」(谷内正太郎

などなど。
同じく国境を接するロシアや韓国については、ひとことも出てこない。北朝鮮は数行、でも、中国ほどの脅威は覚えていないらしい。
しかし、今のままでは中国とコトを構えることになっても、アメリカは助けにこない、というのが、彼らの不安のもとなのだ。なにせ、中国は現在GNPが世界二位。アメリカ資本のお客さんとしても、また軍事力の面からも、アメリカとしては戦いたくない相手なのだろう。
だから、集団的自衛権を行使することによって、アメリカの戦争を買って、恩を売っておこうじゃないか、ということだ。アメリカに恩を売っておけば、いざ、日中間で紛争がおきても、アメリカは嫌とは言えまい、という、そういう理屈らしい。
だから、自衛官アメリカの戦争で一人二人死んでも、いや、10人20人くらい死んでもらった方がむしろ、アメリカに恩を売るという点では効果的、と考えているんじゃなかろうか……と、これはそこまでは書いてなかったけれど、nikkouの想像。死んだ自衛官はヤスクニに祀られるんだろうね。そして、彼らは本気で、自衛官たちが国益のための犠牲になったと信じるんだろう。

前に読んだ浅井氏の『すっきり!分かる 集団的自衛権Q&A』では、EU諸国がソ連崩壊の際、国家論・安全保障論について、国をあげてオープンな議論をした、と書いてあった。だから、イラク戦争には、自分たちの国家観、安全保障観にあわない、という視点から、出て行かない、という選択をする国があった。でも、日本は、アメリカに恩を売るために集団的自衛権を行使するのだから、理のない戦争にも(いやむしろ、世界中が非難して、軍事協力をしないような戦争にこそ)、出て行くことになるのではないかと思う。右派のひとからも「アメリカのポチ」と揶揄されるのは、そのあたりの事情を酌んでのことなんだなあ、と腑に落ちる。
また、『すっきり!』のほうで強調されていた、アメリカからの強い要請、という点にはあまり触れていない。なぜなんだろう。
「押しつけ憲法」ならぬ「押しつけ改憲」であることを直視するのが嫌なんだろうか。

そんなわけで、中国が脅威っていうなら、中国を無力化してしまえばいいんじゃないか、と思った。そのために、一市民ができることは・・・・・・中国の民主化支援? 劉暁波氏を応援するか? なんて思っていた折しも、勤務先の社長が中国出張から帰ってくる。開口一番「中国の民主化は無理だなー」。一言で言い尽くせないいろいろなことがあったらしい。さようかー。こまったねえ。