『マザーズ』(金原ひとみ)

マザーズ

マザーズ

産む前に読まない方がいいんじゃない? と夫に言われたものの、好奇心に負けて読んでしまった。
小説なので、極端なのはやむを得ない。ただ、いまいち共感しきれなかったのは、登場人物が若すぎる、ということだ。自分の周囲で、20代で出産した女性が皆無(そもそも子どもを持っている人が少ない上に、中学高校大学の同級生や職場の女性たちは、35歳を越えてから産む人ばかりだ)、高校生時代徹夜で遊び、ナンパされた若い男とセックスをし、大学に進学せず、専業主婦や作家やモデルという進路をとった女性も皆無だ。だから、へー、という感じが最後まで否めなかった。ただ、自分も20代、いや30代前半であっても、子育ては無理だったのではないかという気がする。夫は仕事でほとんど家に帰れずあっぷあっぷだったし、私も仕事に夢中だった。今、ようやく後輩に引き継ぐくらい仕事もまとまってきたし、夫も中堅として落ち着いてきて、ようやく、子育てしよう、という気になった。よく、我々の親の世代は20代で子育てしていたなあと思う。
乳幼児がいきなり吐いたり便を漏らしたりすさまじい声で泣いたり、ということには、10歳年下の妹がいたので、自分も記憶にある。そのころ母はそれこそアラフォーで5人目の育児だったので、実に堂々としていた。その母を見ているので、あまり育児に対する嫌悪感もない。
子育て下手の根幹に少子化の影響があるというのは事実ではないかと思うが、それはもう30年ほど前に種をまかれてしまっているんじゃないかという気がする。私の同級生で5人兄妹というのはもうまれであった。今後、私があと4人生む、というのは、生物学的にも無理だ。私の周囲でも4人以上生む人はめずらしい。こうして世の中どんどん、子育てが下手になっていくのだろうと思う。我が子には叔父叔母が多いのを幸い、せめて、いとこたちとたくさん付き合わせておこう、と夫とは話している。