『失敗の愛国心』(鈴木邦男)

失敗の愛国心 (よりみちパン!セ 34)

失敗の愛国心 (よりみちパン!セ 34)

宮城県東北学院榴ケ岡高等学校出身とのことで、高校時代、教師は「一高、二高に入った奴らを見返してやれ!」と「復讐心」をあおり、それで勉強させようとした、とある。宮城県出身の相方にこの部分を見せたら、苦笑していた。公立高校にここまですっきりと分かりやすい序列がある、という世界は、東京出身の自分にはなかなか感覚的に理解できない。ミッションスクールでありながら、教師たちから暴力をふるわれ、聖書の「愛」など嘘だと思っていた、という。一方で、30年たった今、「聖書に触れてよかった」ともいう。「苦しい時や落ちこんだ時など、聖書の中の言葉を思い出し、いまでも励まされることも多い」とか。ただ、強制されたから、反発した、と。クリスチャン・ホームを築こうとしている今、とても考えさせられる。

現地の人びとの中にも、「独立できたのは、日本のおかげだ」と言う人もいるから、日本人もついその気になる。たしかに、そう言ってくれる人びとの気持ちはありがたい。しかし、日本としては、「そうだ、俺たちのおかげで独立できたのだ。もっと感謝してもらいたい」などとは言うべきではない。あくまでも謙虚でありたい。「そう言ってくださるのはありがたいが、独立はあなたたちの力です。日本は迷惑かけて申しわけありませんでした」と。ましてや、植民地にした台湾や朝鮮、韓国についてはそうだ。「西欧の植民地支配に反対する」といって戦争をしながら、同じように植民地支配をしたのだから、弁解の余地はない。
 国家も個人も同じだ。失敗したら謝る。間違いも謝る。そこから、仲良くなることもできるんだ。

という部分には、とても深く共感する。しかしこの、しごく単純なことが、どうして、いつまでもできないんだろうな。