『砂の女』安部公房

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

川上弘美『真鶴』を読んで、ふと思い出したので読み返した。初読はたしか高校生の時。口の中がざらざらするような感じがするのは、今読み返しても同じ。理不尽さにいらいらしていたのが、だんだん、理不尽が理不尽でなくなる感覚に飲み込まれるのもまた同じだった。ただ今回は、『真鶴』の影響で、妻の立場から読んだので、ちょっと変な気がするところがちらほら。主人公の男は学校の教員で、妻はいるらしいのだけど、下宿で一人暮らしをしているらしいのだ。時々挿入される妻の記憶からすると、関係は冷えているらしい。男がどこで「失踪」したのかは、「砂」の町のある駅まで追跡されているので、知られている。なのに、「失踪宣告」が出されてしまう。「男」は、妻から捨てられたとしか思えない。そう気付くと、ますます砂の穴に潜りたいような気がしてしまう。