『されど“服”で人生は変わる』斎藤薫

されど“服”で人生は変わる

されど“服”で人生は変わる

重たい本が続いたので気晴らしになるかなあ、と手に取った一冊。
でも、日本の洋服文化はまだ、幸田文の『きもの帖』には遥かに及ばない、ということを思い知らされる。
戦後は2着の浴衣をすり減らして着ていた、夏の終わりにくたびれたきものを着てはいけない、30代になったらどんなきものでも遠慮なく着ろ、太ったおかみさんの貝の口の結び方が粋だった、レストランで縮緬に水をかけられてもどうどうとしていた若い女性が美しかった、と書く幸田文に対して、日本の洋服文化を語る本は、どうしても手探りの観が否めない。断定的な文体で書く斎藤薫にしても然り。洋服文化の国には、もっと深みのあるファッション論を書く人がいるのかもしれない。日本も後100年もすれば、幸田文のきもの論に匹敵する洋服論を書く人が現れるだろうか。それまでは私たちも自分自身で洋服のセンスやマナーを各自手探りしていくしかないのかもしれない。