「名所探訪 地図から消えた東京遺産」田中聡

山谷に行ったとき、案内してくれた友人が「このあたりが小塚原刑場の涙橋、あっちが吉原」と江戸時代からの地名をぽんぽん言うので、ふと気になって本書を読む。
江戸川乱歩の「浅草一二階」・三島由紀夫の「鹿鳴館」・永井荷風の「玉ノ井」など、本の中ではよく読むけれど、そういやどのへんだったの?という建物・街や、赤ひげの「小石川養生所」・幸田露伴の「谷中五重塔」など、遺跡に遊んだことはあるけれど、どういういきさつで今の形態になっているんだろう?というもの、さては、「巣鴨プリズン」や「淀橋浄水場」など、そんなところにあったの!?という驚き、さらに、「小石川切支丹屋敷」「田端文士村」「池袋モンパルナス」など、そもそもその存在自体知らなかったよ!という街の歴史まで、発見の多い一冊でした。

タヌキの本もそうでしたが、東京の歴史というのは感覚的にとっても面白い。東京育ちですが、なんとなくここは時間、空間を超越してぽつんと浮かんでいる街という印象が強い。でも、歴史をひとつめくると、私は今、予想外に小さな街に、長い時の一瞬だけいるんだなあ、と感じる。