『ヒーローを待っていても世界は変わらない』湯浅誠

ふと思い出して、積ん読していた『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(湯浅誠朝日文庫)を取り出してみた。
すごく面白かった。

著者の湯浅さんは、ホームレス支援に長年関わっていて、「年越し派遣村」で一躍時の人となった。
その彼の、わりと最近の著書である。
湯浅さんは、民主主義について、とくに「少数派」と目される人たちについて、その意見の取り上げ方について、また議論の方法について、掘って掘って、どんどん掘り下げていく。
結果、問題が些末で複雑になるか、というと、逆だ。とても単純で重要なところに行き着く。
たぶん聖書でいえば、こういう言葉に還元されることだ。「汝の隣人を愛せよ」そして「汝の敵を愛せ」。
・・・・・・それって、具体的には、こういうことなんだな、となんか、ぱしっと頬をたたかれたような気がする。

湯浅さんは言う。「少数派」と目される人たちに寄り添い、声を聞く。それが、人間社会を強靱なものにする。

震災時、なぜ被災者に対して「足湯」が提供されるのか。湯浅さんの解説を読みながら、ふと、この夏、とあるクリスチャンの集まりで経験した「洗足式」を思い出し、はっと気づいたら、落涙していた。