『ダロウェイ夫人』ヴァージニア・ウルフ 土屋政雄訳

ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)

ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)

ウルフは初めてだったのでした。「ヴァージニア・ウルフなんて怖くない」っていう映画やら、難解で退屈という噂やらで、若干おっかなびっくりで読み始めたのですが、一気に読んだ。全然難解でも退屈でもない。主語の変換、意識の流れの描写が難しいなんていう評もあったけれど、訳がうまかったのか、全然、主語を見失うことなどなかった。なにも起こらなくて退屈、という評もあったけど、むしろ、一日の間にずいぶんいろんなことが起きるなあ、と思った。日本の現代小説でも庄野潤三とか、堀江敏幸とか、もっと何も起こらないのあるし。表現は本当にすばらしい。なるほど、古典になっているわけだ。うまいこと言うなあ、と思う瞬間瞬間がたくさんあった。中年向けの小説、という評も見たけれど、こういうのを面白いと思うなんて、nikkouも、中年になったんだなあ、としみじみしてしまった。