『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』国分功一郎

昨日の夜、NHKクローズアップ現代で「子供って迷惑?」という番組をやっていて、つらつらと見ていたのだけれど、とても面白かった。保育園建設に周辺住民が反対している地域と、それを解決した地域の話。
NHK クローズアップ現代
その後、ネットで観た人の感想を検索したら、もっぱら、周辺住民が愚かだっていう感想が多くて、おやおや、と思う。
ゲストコメンテーターの千葉大の木下勇教授も、「周辺住民が悪者にされちゃうと困るなあと思いながらVTRを観ていたんですが……」と言っていたけれど、たしかに、周辺住民は我慢しなさい、という結論ではなかった。
子供がテーマだから感情的になりがちだけれど、たぶん、これは、国分功一郎なんかが啓蒙していたような「新しい民主主義」の話なんだろう。
これまでは、「立法府に送る議員を、国民が選挙で選ぶ」という「立法」に関わる形の「民主主義」だったけれど、それだけでは不十分で、これからは、「行政」にも「住民が関わる」という「民主主義」をしていかなきゃならない、と国分さんは『来たるべき民主主義』(幻冬舎新書)で書いていた。
だから、行政が一方的に「公共の福祉」のためにこういう施策をするので、住民は嫌でも我慢すべきである、というやり方ではなく、行政は「こういう保育園(などの施設)を作ります」と案内し、住民は「それなら、こういうふうにしてください」と、話し合いに参加し、お互いに妥協点を見いだす。そのためには「ファシリテーター(調整役)」も重要だそうだ。
NHKの番組もそういう話になっていた。
反対する住民には「ファシリテーター」を買って出たおじいさんが「子供の声のない街なんて、死んでしまう」と説得し、区役所との話しあいで、騒音や日当たりなどに配慮した建物を提案し、保育園の先生たちまで話し合いに参加して、住民と保育園の距離を近づけていった。
最後に、街のお祭りに参加する子供たちに、手を合わせるようにしておばあちゃんが「かわいいねえ」と笑っている様子が映されていた。
民主主義ってのは、まだまだ進化できる、という例だったと思う。もう、子どもが迷惑だ、そっちが迷惑だ、みたいな水掛け論は、やめようよ、と心底思う。