『反旗――中国共産党と闘う志士たち』石平・劉燕子

反 旗――中国共産党と闘う志士たち

反 旗――中国共産党と闘う志士たち

莫言を読んで、本当にそんなことが中国で行われているのか、やはりフィクションなのではないか、という思いで、『反旗――中国共産党と闘う志士たち』を読み始める。
7人の民主化運動家たちに取材した本。

アマゾンから届いた箱を開封して、版元が育鵬社であることに気づき「あちゃー」と思ったが、読み始めてみるとさほど扇情的ではない。
というよりも、「志士たち」がきわめて高い倫理観を持った人たちであるせいか、イデオロギーとかなんとかを超越しちゃってるかんじ。
なにより、取り上げられている民主化運動家にクリスチャンが多いことに驚く。韓国の民主主義運動も教会が拠点になったと聞いたけれど、民主主義の自由・平等という思想のもとは、やはりイエスなのかなあ、と思う。


とくに劉暁波氏の言葉には震えた。
文革について、多くの民主化運動家たちは、責任を中国共産党にかぶせる。しかし、劉氏は、あの頃子どもだった自分が、近所のお年寄りをいじめた経験を告白して、言う。
文革の責任は、中国人ひとりひとりの人権意識のなさ、残酷さのせいではないか。ひとりひとりが心の「鬼」を退治して、愛と寛容を心に受け入れなければ、民主化が実現しても、よい国にはならないのではないか。

それって、中国に限った話じゃない。とても普遍的な、日本にだって当てはまる真理だ。
……劉暁波氏がクリスチャンという話は聞かない。でも、やはり、クリスチャンなんじゃないかなあ、と思える語彙や表現が多い。

劉氏の夢が、希望が、かなう日が来れば、中国のみならず、世界はよりよくなるだろう、という気がする。

中国の民主化を支援すること、じつはそれが、遠回りなようで、一番、集団的自衛権を発動させない近道のような気がする今日この頃。