『金子光晴』(ちくま日本文学038)

金子光晴 (ちくま日本文学)

金子光晴 (ちくま日本文学)

詩はむずかしい。なかなか、すんなり頭に入らない。金子光晴は女を詠んだ詩人、と言われるけれど、本書はどちらかというと、明治の空気を残す庶民の生活や、戦時中の中国に渡った日本人たちの荒んだ様子を描いた作品が多く、いずれも、今の日本人として読むと、外国の話のようであった。「どくろ杯」という作品に、ふと魯迅が出て来たりする。魯迅は、中国に帰ったあとも、日本の文人たちとごく自然に交流していたんだなあ、と思いがけないところで「藤野先生」の後日談を読んだような気がした。