『天上紅蓮』渡辺淳一

天上紅蓮

天上紅蓮

ガイアの夜明け」で幻冬舎見城徹氏が渡辺淳一の前で絶賛していたので、どんなものか、と買ってしまった。ちくしょー、だまされた。超つまんねー。金返せー。読んだ時間返せー。

白河法王と待賢門院たま子(私のパソコンでは漢字が出ない)をモデルにした歴史小説。本書によれば、たま子は祇園女御の養女で、15歳にして63歳の白河院の愛人になったという。祇園女御については、吉川英治の『新平家物語』で読んだ。ずいぶん昔に読んだのでよく覚えていないのだけれど、真に迫った描き方で、祇園女御という存在感が胸にひしひしと迫ったことだけは、今も感覚として残っている。
『新平家物語』でたま子について描かれていたかどうか、まったく覚えていないけれど、小説の題材としては、興味深い人物だとは思う。白河院に寵愛された女の養女で、15歳にして、義母のパトロンを奪った。義母の祇園女御はどう思ったのだろうか。そのあたりについては、この小説ではなにも触れていない。白河院の愛人でありながら、鳥羽帝に嫁がされる。鳥羽帝はどう感じていたか、というと、かなり月並みで、しかも晩年は白河院と仲良くなったりして、なにがどうなっていたのか、わからん。いや、そもそも、主人公のたま子の心情も、どうでもいいみたい。

最後の章で、
「これだけすべての権力を兼ね備え、かつ深く愛を捧げ尽くしてくれる男にめぐり会えたことは、まさしく女冥利に尽きる無上の幸せであった。」
…ってそれは、作者の感想であって、小説ではないのではないか。
「このことに関して、たま子がどれくらい罪の意識を抱いていたかは不明である。」
…ってそれを書くのが小説なんではないのか。鳥羽帝に「ごめんなさい、とつぶやき、お許しくださいと謝りたい」とか言っているシーンがあるが、そんな陳腐なもんかいな。

セックスシーンだけは執拗で、(でも珠子の反応は、いつでも「法王さまあ」だけである)セックスシーンが目的ではなかった私としては、まったくの時間の無駄でした。