『中原淳一 きもの読本』中原淳一

中原淳一きもの読本

中原淳一きもの読本

中原淳一の描く和装ってのが、これまたモダンで色っぽくて愛らしい。眼の保養です。こんなデザインのきものがあったら、ほしいなあ、というものもたくさん。古びないのがきものの良さですなあ。
中原淳一のエッセイで、あっ! そういうことだったのか! ということが2つ3つ。

…お嫁にゆくときはタンス一さおとか二さおとか、経済状態によっていろいろですが、そのタンスの中にたたんだきものを、いっぱい入れて持って行ったほどですから、娘時代から手頃なものや、良い柄の見つかったときには、いますぐ必要かどうかに関係なく、買いためておくのが習慣でもあり、娘をもつ親のつとめでもあったのです。

nikkouは古着屋さんでアンティークきものを買うことが多いのですが、時折、しつけ糸のついたままの、しかし古いきものが出てきたりします。昔に作って、しかし一度も着なかった、というわけ。また、ネットのきものショップには、大量の普段着用の反物が出ていて、それも古いものらしく、反物の端(耳)が焼けていたりする。それらはおそらく上記に書かれているように、「お嫁にゆくとき」用に作っておいて、なんらかの理由で「お嫁にいかなかった」か、あるいは結婚後も着なかったまま、タンスの中に眠っていたものなんでしょうね。「習慣」というからには、まだまだ、日本中のおばあちゃまたちのタンスのなかには、そんなきものや反物がたくさん眠っているのではなかろうか。

あるいは、こんな記述。

(中原の母がきもので外出し)、そして帰宅をして、普段のきものに着かえるとき、折悪しくその部屋に家族のものがいると、外であったことを話しながら、肌とか肌着をまったく人に見せないで、まずこれから着るきものを片方の肩にパッとかけて、スルリと帯をとき、その下で腕を通し、また同じように片方の肩にきものをかけ、今まで着ていたきものを落とし、事もなげにすらすらと着替え、帯をしめ、すぐその場に座って、脱いだきものを鮮やかな手さばきで、パタパタとたたみ、タンスにきちんとしまいます。

こんなこと、日本中の奥さんたちが普通にやっていたことなんでしょうか。すごいなあ。