『詩心――永遠なるものへ』中西進
- 作者: 中西進
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 新書
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「恋ひ恋ひて 逢へる時だに 愛(うるは)しき 言(こと)尽くしてよ 長くと思はば」(大伴坂上郎女)『万葉集 巻四、六六一』
恋して恋してやっと会えたのだから、その時だけは、気持ちのいい言葉ばかり言ってよ、私たちの恋愛関係を長く続けたいと思うなら。
nikkouが結婚したとき、教会の奏楽のおじいさんから言われた。「結婚したらよくわかるよ。思ったことは、全部、言えばいいってもんじゃないって。」
そのときは、「はあ、そうですか」と思ったもんですが、今になれば、よくわかりますね。「それを言っちゃあ、お終めえよ」ということが、他人である夫婦なればこそ、たくさんあります。相手の実家の悪口とか、どうせ長続きしないんだろうなと思っているもろもろ(ダイエットとか、ペン習字とか、腹筋とか)、二三回言ってもなおらない悪癖とか。どうでもいいことをわざわざ言って、喧嘩するのもばかばかしい。
大伴坂上郎女の歌は、もうすこしラブラブのころの歌でしょうか。でも、きっと長続きしたでしょう、そういう人間関係のルールが分かっていればね。