『言葉と戦車をみつめて』加藤周一著 小森陽一・成田龍一編

言葉と戦車を見すえて (ちくま学芸文庫)

言葉と戦車を見すえて (ちくま学芸文庫)

加藤周一の文学的なエッセイを読みたくて買ったのだけれど、政治的なエッセイを中心に編んだものでした。
個人的に、現代史の弱いところが分かった気がする。まだ、第二次世界大戦やその直後のことは、知識的にも感覚的にもそんなに分かりづらくはないのね。その時代に書かれた小説も、その時代について書いた本も知らず知らずにずいぶん触れているし。さらに、90年代、湾岸戦争とか、オウム真理教の事件や阪神淡路大震災、21世紀に入って9.11なんかはリアルタイムで分かる。でも、その間のことって、知識的にも感覚的にもずいぶん分かりにくい。キューバ危機とか、プラハの春とか。いや、知識としては、たぶん学ぼうと思えば学べると思うんだ。でも、加藤周一がエッセイを書いているときの熱っぽさみたいなのは、分からないなあと思った。そうやって、樋口一葉が描いた明治時代が遠くなっていくように、1960年代、70年代って薄くなっていくんだろうね。