『真鶴』川上弘美

真鶴

真鶴

「蛇を踏む」とも「センセイの鞄」とも違ったテイスト。純文学系。祖母・母・娘の三人の女の家庭の心理描写が見事。
失踪してしまった夫が、妙に「この世」とちぐはぐな男だったことが、「この世」的な愛人「青茲」との比較や、さまざまなエピソードから浮かんでくる。主人公の「京」も、女幽霊に付きまとわれつつ、この世から連れ去られそうになる。この世をはなれても、この世にいても、荒涼とした風景だなあ、と思わされたところで、主人公はこの世に戻ってくる。
「失踪宣告の申し立てをしようと思うの」というせりふで、はっと、『砂の女』ってどんな話だったっけ? と思う。「砂の女」に取り込められた夫の、家族の話だったのかな、これって、と。というわけで、『砂の女』を再読しようと思う。