『堕落論』坂口安吾

堕落論 (新潮文庫)

堕落論 (新潮文庫)

安吾は「白痴」よりも「桜の森の満開の下」よりも、「ヨーロッパ的性格、ニッポン的性格」に描かれたザビエルや弥次郎、「道鏡童子」に描かれた高野天皇のほうがよっぽど小説的で、生き生きしている気がする。これを読んでしまったらもう、聡明で合理的なザビエルややくざ者の弥次郎、徳の高い道鏡や孤高の高野天皇は、そういう人物でしかありえない、というような存在になってしまう。安吾、語りの名手であります。
「教祖の文学」は、たしかに可笑しくって、べらんめえで、なんだか無茶ぶりなんだけど、引用されている宮沢賢治の詩がとてもいい。