「黒人霊歌は生きている」(ウェルズ恵子)

黒人霊歌は生きている―歌詞で読むアメリカ

黒人霊歌は生きている―歌詞で読むアメリカ

ひさびさに、むっちゃ面白いわーー!!と思った本。これまでの黒人霊歌やゴスペルの本では触れられてこなかった、死への恐怖、終末への期待、という黒人霊歌の一番コアな部分をきちんと指摘してくれていて、そうそうそうそう!と膝を打つ思い。
冒頭に、アメリカ人にとって、黒人霊歌アメリカの暗黒部を思い起こさせるものだ、という指摘がある。これがねー、日本のゴスペルシンガーズにぴんときていないところなんだろうなー。(私も含めて)。
以前、ドニーマクラーキンが来日した折、アメリカから連れてきたバックシンガーズに白人男性がひとり入っていることに関して、「昔、白人は黒人を奴隷として使っていましたが、今、黒人の私が白人の彼を雇用しています」とジョークをいい、通訳者が絶句。かろうじて「Yes」とだけ答え、ドニーから「訳しなよ」と突っ込まれていました。簡単な英語だったので、会場のほとんどは理解し、そして、えもいわれぬ笑いが広がったのでした。ブラック・ジョークなんだろうけど、私たちは、そこで笑っていいのか!?と思った。ドニーのあの感覚は、きっと日本人には、わからない。どんなに歌っても、どんなに本を読んでも、たぶん、わからない。わからないものをあえてわかろうとする必要はないけれど、知っていたほうがいい。この本を読みながら、強く強く思った。