『夫のちんぽが入らない』(こだま)

夫のちんぽが入らない(扶桑社単行本版)

夫のちんぽが入らない(扶桑社単行本版)

なんか、すごい本を読んでしまった。いったいどういう障害でそうなるかわからないが、夫とだけ、性交ができないという。その上、教員時代、学級崩壊でうつ病(と思われる)を病み、免疫不全障害となる。夫は精神的に強い支えとなるパートナーであるのに、性交ができない。
我々夫婦も、同じではないが、似たような状況で、結局、不妊治療を選んだ。
病院の待合室で、人工授精の順番を待ちながら、あるいは妊娠判定を待ちながら、ソファーから滑り降りて、跪いて、いや、床にひれ伏して祈りたいと思った長い月日を生々しく思い出した。子供ができれば有頂天で、その日々を忘れがちだ。でも、忘れちゃいけない、絶対に忘れちゃいけないと改めて思った。
そしてもう一つ、田房永子さんはじめ、この世代(30代後半から40代前半)は、どういうわけか、母親の影響が強い。自分もその世代に入る。高度成長期あるいはバブル期の専業主婦というのは、非常にストレスフルな状況に置かれていたのではないかという気がする。第3次ベビーブームが来ず、少子化が始まった理由は、ひょっとしたら、この母親と父親たちにあるのではないかという気がする。

心に沁みた言葉

P195

子を産み、育てることはきっと素晴らしいことなのでしょう。経験した人たちが口を揃えて言うのだから、たぶんそうに違いありません。でも、私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。人に見せていない部分の、育ちや背景全部ひっくるめて、その人の現在があるのだから。それがわかっただけでも、私は生きてきた意味があったと思うのです。そういうことを面と向かって本当は言いたいんです。言いたかったんです。母にも、子育てをしきりに勧めてくるあなたのような人にも。

「美しい」ってなんだろう?―美術のすすめ (よりみちパン!セ 26)

「美しい」ってなんだろう?―美術のすすめ (よりみちパン!セ 26)

カバーをはずすと、カバー裏に美術品の大きさ比較がカラーでプリントされている。すごいコストがかかっている。これで1400円ってすごい。
森村さんの言葉は時々とても勇気づけられる。本書でもっともはげまされた部分。

P108〜110

「ものまね」のすすめ
世の中ではオリジナリティのたいせつさが強調されることがおおいと思います。他人のものまねではなく、自分独自の世界を持つべきだ、個性的であれ、そのようにお説教されたことはありませんか。
 私の考えかたは、ちょっとちがいます。まずはものまねをしろ、と私は言いたい。なんでもいいんです。あんなふうな生きかたをしたいと思えるひと、いいなあと感動できる絵、あんなふうに書けたらいいなあとなんども読みかえしてみたくなる小説、なんでもかまいません。そういうあこがれの対象を見つけたら、それをおおいにまねることです。さいしょに言ったように、「まねる」ことは「まなぶ」ことにつながるのですから。

 でも、まねたらそれでOKというわけではありません。まねた世界になにかをつけくわえたり、ちがう角度からながめたりしてみてください。画家マネがしたことはそういうことでした。
 さあ、ではこれで終わりかというとまだまだです。なにかをまねることで生まれたあなたの世界に、さらに変化をつけていかねばなりません。こうかな、いやああかなといういろいろな思いが生まれてくるはずですから、こんどはそれらをたいせつにしつつ、アレンジをくわえるのです。
 まねをした世界をてがかりに、いわば、まねのまね、そのまたまねのまね、と続けていく。こういう一歩一歩の「まねる」歩みが、ついにはもとの世界とはまったくちがう新たな世界を、知らないあいだにうみだしていくことになる。

 科学的な発明や発見、芸術的な独創性、こういったものは、とつぜん生まれるわけではないのです。すごいなあ、いいなあと感動できる先輩たちの業績に影響され、それらをまねて、いろいろやっていくうちに、いままでになかった新しい世界が開けてくるのです。
 無から有は生まれません。まずは、「すばらしい!」とすなおに感動できる世界を見つけだしてください。そしてそれをまねてください。すべてのはじまりはそこにある。私はそう信じています。