『永井荷風』(ちくま日本文学19)

通勤時に通る京成線界隈の地名や、職場近辺の地名がわらわら出てきて、えー、そんなんだったのー、と驚くばかり。
「日より下駄」に出てくる「なか川」は、私も通勤の車窓から眺めるのが好きな光景のひとつだったのだけれど、「好きな川」という認識は、本書を読んではじめて得た感触だった。以来、通勤電車が鉄橋をわたるたびに、目を上げて、あらためて、しみじみとみてしまう。
「濹東綺譚」は学生時代に読んで以来。でも、こんな話だったっけな、と驚くほど、すごい話だった。玉ノ井も、通勤経路だなあ。窓の外の思いもよらぬ歴史に、つい、郷土史を買い求めて読んでしまう。